遺留分とは,遺言で他の相続人が全部を相続すると指定されている場合でも,一定の範囲の相続人においては,相続財産の一定割合について,相続する権利を保障するものです。
遺留分の権利を有しているのは,①配偶者,②子,③直系尊属となります(民法1028条)。
兄弟姉妹には遺留分はありませんので,ご注意ください。
子の代襲相続人(孫)がいる場合には,被代襲者である子の遺留分と同額の遺留分を有することになります。
総体的遺留分とは,遺留分権利者全体の遺留分の割合のことをいいます。
遺留分権利者が,①配偶者のみ,②配偶者と子,③子のみ,④配偶者と直系尊属の場合には,全体の2分の1が遺留分権利者全体の遺留分の割合になります。
遺留分権利者が,⑤直系尊属のみの場合には,全体の3分の1が遺留分権利者全体の遺留分の割合になります。
個別的遺留分とは,遺留分権利者が複数いる場合に,各権利者固有の遺留分を算出するために,総体的遺留分に各自の法定相続分をかけたものをいいます。
遺留分の金額は,以下の式にしたがって算出します。
①遺留分算定の基礎となる金額 × ②各権利者の個別的遺留分の割合
遺留分権利者が取得する相続財産がこれに満たない場合には,この遺留分額を満たすまでの具体的な金額を遺留分を侵害しているという理由で請求することができます。
①遺留分算定の基礎となる金額は,以下の通り算出します。
(相続開始時に被相続人が有していた財産の価額)に
(被相続人が贈与した財産の価額)を加え,
(相続債務の金額)を控除します。
②各権利者の個別的遺留分の割合は,以下の通り算出します。
(総体的遺留分の割合)×(法定相続分の割合)
相続人:子2人(A,B)
遺産の総額:1億円
被相続人がAに対して1億円全てを相続させる旨の遺言があったものとした場合
Bは,1億円×(1/4)=2500万円の遺留分侵害があるとして,Aに対して請求することができます。
遺留分侵害額請求は相続の開始及び遺留分を侵害する贈与等を知ったときから1年を経過すると時効によって消滅します。