1:調停の特徴
- 当事者の合意による解決が原則
調停手続はあくまでも当事者間の話し合いによる解決の手助けをするというものです。
- 離婚訴訟は離婚調停を経由しないと原則として提起できない
離婚のような身分関係に関するものは、できるだけ当事者同士による話し合いによる解決が望ましいものとされており、原則として調停手続を経てからでないと、訴訟を提起することはできないとされています。
- 手続きが非公開である
離婚のような極めて個人的なプライバシーにかかわる話をするので、調停手続は非公開となっています。関与する調停委員にも守秘義務が課されておりますので、話した内容が外部に漏れることはありません。
- 調停で成立した内容は判決と同じ効力がある
成立した合意の内容を記載した調停調書は確定判決と同様の効力を持ち、これに基づき給料の差し押さえ等を行うことができます。
2:調停期日の進行
2-1:調停委員
調停は、裁判官または家事調停官1人と家事調停委員2人で構成される調停委員会が担当します。
通常は、裁判官または家事調停官は、調停に参加することはほとんどありません。男女1名ずつの家事調停委員2名が、各当事者の話を聞いたり、解決を見据えてお互いを説得したりします。
2-2:調停期日の進み方
1回の調停期日にかかる時間は全体で2時間程度で、通常はおおむね以下のとおり進行します。
- 2人の調停委員が、当事者双方から個別に事情を尋ね、意見を聴く(一方当事者から話を聴いている間、他方当事者は待合室で待つことになります)。
- 双方から聴取した事情を踏まえて、争いのある点を整理し、調停委員が今後の調停の進行を検討する。
- 検討を踏まえ、次回までに準備する点、検討すべき点を調停委員から双方に伝える(必要に応じ、双方同席の上で説明がなされる場合もあります)。
次の調停期日までは、1ヵ月~1ヵ月半程度の間隔をあけて次回期日が指定されます。
2-3:どのくらいの期間がかかるのか
解決までにかかる時間は事案によるので一概には言えませんが、3~5回程度の調停期日で解決、あるいは調停不成立で終了する場合が少なくありません。
3:調停が成立したら
調停で合意が成立すると、その合意を「調停調書」という書面に記載します。
この「調停調書」には、確定した判決または審判と同一の効力があります。すなわち、調停調書に記載された事項が履行されない場合には、給料の差し押さえ等が可能になります。
「調停調書」の謄本が必要な場合、申請手続をすれば交付してもらえます。
4:調停が成立しなかったら
調停では協議がまとまらない場合、調停は不成立で終了します。
ただし、以下の紛争については、原則として、自動的に審判手続きに進み、裁判所が協議に代わる審判をして紛争を解決します。
- 夫婦間の協力扶助に関する処分(民法752条)
- 婚姻費用の分担に関する処分(民法760条)
- 子の監護に関する処分(民法766条2項および3項)
- 財産分与に関する処分(民法768条2項)
- 離婚等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定(民法769条2項)
- 親権者の指定又は変更(民法819条5項および6項)
- 年金分割の請求すべき按分割合に関する処分(厚生年金保険法78条の2第2項)
5:調停Q&A
- Q1:調停は公開の場で行われるのですか?
- A1いいえ。非公開です。
裁判官または家事調停官の許可なく当事者と代理人以外の人が調停室に入ることはできません。
- Q2:調停手続きにはどの程度費用がかかりますか?
- A2調停の申し立てをするには、収入印紙と切手を申し立てと同時に収める必要があります。
夫婦関係調整(離婚)調停の場合で、2,100円程度です。
- Q3:相手方と顔を合わせたくないのですが、可能ですか?
- A3申立人と相手方とで待合室は別となっており、調停委員が事情を聴く際も個別に事情を聴いているので顔を合わすことはありません。
調停の成立時には、原則として、双方が同席のもと、同意内容を確認する進行がとられています。
ただし、どうしても同席することが困難である相当な事情が認められる場合には、弁護士だけが同席して行うなどの配慮がなされる場合もあります。
- Q4:調停期日に相手方が来なかったらどうなりますか?
- A4相手方が出席するよう裁判所から働きかけがなされますが、どうしても出席しない場合には、調停は不成立となり終了します。
その場合、事件の内容によって、審判手続に移行するものと手続自体が終了するものがあります。
- Q5:遠隔地に住んでいる場合、裁判所には必ず出頭しなければなりませんか?
- A5当事者が遠隔地に居住しているとき、身体上の障害で出頭困難なときなどは、当事者の意見を聴いたうえで、電話会議またはテレビ会議システムを利用して手続を行うことが可能とされています。この場合、当事者は、依頼をしている代理人(弁護士)の事務所か、電話会議またはテレビ会議システムが利用できる最寄りの裁判所に出向くことで、そこから手続きに参加することができます。
ただし、電話会議またはテレビ会議システムで離婚の調停を成立させることはできません。成立時には、手続きを行っている裁判所に出頭しなければなりません。
- Q6:当事者双方が裁判所に提出した書類を見ることはできますか?
- A6希望をすれば、原則として閲覧・謄写が可能です。裁判所に閲覧・謄写の申請をしてください。
- Q7:提出する書類について、相手方に見られたくない情報がある場合、隠すことはできますか?
- A7隠したい部分が調停委員会に見てほしい部分でない場合には、隠したい部分を黒塗り(マスキング)して資料を提出することができます(例えば、源泉徴収票の住所欄など)。
隠したい部分が調停委員会に見てほしい部分である場合には、「非開示の希望に関する申出書」という書面を提出すれば、非開示にしてもらうことが可能です。