東京・神田の神田総合法律事務所

離婚が認められる事由~どういった場合に離婚できるか~

離婚が認められる事由~どういった場合に離婚できるか~

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1 夫婦が共に離婚に合意している場合

夫婦が離婚に合意している場合には,それだけで離婚は有効に成立しますので,理由は必要ありません。

2 民法上の離婚事由がある場合

夫婦の一方が離婚に応じない場合には,民法が定める離婚原因があることが必要となります。
弁護士が双方の代理人となって交渉を行う場合や,調停を利用して話し合いを行う場合で,夫婦の一方が離婚に応じない場合には、この民法が定める離婚原因があるか否かを見据えながら進めることになります。

民法第770条1項(裁判上の離婚)が定める離婚原因は、以下の通りです。
1号 配偶者に不貞行為があったとき
2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき
3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4号 配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき
5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

以上のうち、実務上よく問題になるのは,「1号 配偶者に不貞行為があったとき」と「5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」です。

 

2-1 配偶者に不貞行為があったとき

2-1-1 「配偶者に不貞行為があったとき」とは

「不貞行為」とは,「配偶者のある者が自由な意思にもとづいて,配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいいます(最高裁昭和48年11月15日判決・民集27巻10号1323頁)。
つまり,「不貞行為」とは肉体関係のことであり,それに至らない場合には「不貞行為」にはあたりません。例えば,異性と親しくメールをしている,異性と二人きりで食事やドライブに行っているだけでは,不貞行為があるとはいえません。
「不貞行為」は,一時的なものか継続的なものかを問いません。性風俗の利用も肉体関係があれば「不貞行為」に該当します。

 

2-1-2 不貞行為の立証は意外にハードルが高い

相手方が不貞相手と肉体関係が持ったことを素直に認める場合にはそれ以上の証拠は必要ありませんが、肉体関係を持った事実を認めない場合には肉体関係の存在を証明する必要があります。
例えば,最も直接的な証拠は肉体関係の現場写真ですが(携帯電話のカメラ機能で撮影したものでも証拠となります),多くのケースではこのような直接的な証拠は存在しません。
そこで、一般的な感覚で考えて肉体関係を持ったと推認できる状況であることを立証することになります。
例えば,以下のような状況がこれに該当します。
①ラブホテルに出入りする写真を撮影し,ホテルの滞在時間等を証明する
②どちらかの自宅で朝まで滞在したり、旅行に行って同室に滞在している
③メール等のやり取りから肉体関係が明らかになっている
要するに、第三者の目から見て、「これはどう考えても肉体関係を持った」という程度まで推認させる証拠が必要になります。
不貞行為の立証の問題については,なかなか難しい問題をはらんでおり、探偵や調査会社の利用も高額になりますので、一度,弁護士にご相談ください。

 

2-1-3 不貞行為の立証ができない場合

万が一,肉体関係の存在まで証明ができない場合であっても,裁判上,異性との度を超えた親密な交際は,離婚原因の第5号「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたると認められる場合があります。

 

2-1-4 不貞行為に基づく慰謝料請求

不貞行為は,離婚原因となるだけではなく,慰謝料請求権が発生する不法行為にあたります。不貞行為に基づく慰謝料請求については,こちらをご覧ください。

慰謝料に関する説明はこちら

 

2-2 配偶者から悪意で遺棄されたとき

「悪意の遺棄」とは,正当な理由なく,夫婦間の同居・協力・扶助義務(民法752条)及び婚姻費用分担義務(民法760条)に違反する行為です。
「悪意」というのは,義務を履行しないことによって夫婦関係が破綻するかもしれないことをわかっていたにもかかわらず,それでも良いと容認することをいいます。

例えば,夫が家を出ていって,妻や子どもに生活費を送らないようなケースが挙げられます。

もっとも,別居の原因が一方配偶者のみにあるとはいえない場合には,正当な理由がないといえない場合があります。
例えば,仕事の都合で単身赴任をしているような場合には,「悪意の遺棄」にはあたりません。

 

2-3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

「3年以上の生死不明」とは,生死不明という客観的状況が3年間継続していることをいい,生死不明の原因を問いません。
単なる音信不通では,客観的に生死不明とはいえず,これにはあたりません。

 

2-4 配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき

「強度の精神病」とは,精神病の影響で夫婦間の同居・協力・扶助義務(民法752条)を果たすことができないことをいい,「回復の見込みがない」とは,その精神病が治る見込みのないことをいいます。

もっとも,精神病に罹患した本人の保護を考え,裁判所はこの離婚原因を認めることに慎重です。

 

2-5 婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

2-5-1 婚姻を継続し難い重大な事由があるときとは

「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは,婚姻関係が破綻し,共同生活の回復の見込みのない場合をいいます。

 

2-5-2 どんな事情を考慮されて判断されるか

婚姻関係が破綻しているかどうかは、以下のような事情を総合考慮して判断されます。
・別居の原因,別居期間
・双方の婚姻継続意思の有無
・婚姻関係を修復する努力がされていないこと等,夫婦間の婚姻中の態様
・子どもの有無や状況
・夫婦双方の年齢や資産・収入

 

2-5-3 別居して何年で認められるのか

別居期間が5年以上に至っている場合には,婚姻関係の破綻が認められやすいといえます(ただし,別居に至る原因につき,責めるべき事由がある者からの離婚請求の場合には(例:自らが不貞行為をした当事者等),より長期の別居期間が経過していなければ離婚が認められない場合があります)。

 

2-5-4 具体的にどのような場合に離婚が認められているか

具体的には、以下のようなケースで問題になります。
・暴力
・虐待
・暴言,重大な侮辱
・浪費,借財,不労
・過度の宗教活動
・犯罪行為,服役
・親族との不和
・性の不一致
上記のうち,1つでは離婚原因とまで認められない場合であっても,複数の要素が合わさることで「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして,離婚が認められる場合があります。

 

2-5-5 裁判例紹介

①暴力を理由に離婚を認めた事例(東京地判平成18年11月29日)
夫が妻に対し,夫婦喧嘩の際に,たびたび食器を投げるなどしていた夫婦につき,夫が妻に本を投げつけた暴行行為により,本が妻の目に当たって出血し,緊急手術の結果,妻の視力が低下し,妻にPTSDの障害が残ったという事案。
裁判所は,夫による暴行と妻の受傷によってその婚姻関係は完全に破綻したと認定。妻からの離婚請求を認容し,不法行為に基づく損害賠償と離婚慰謝料請求を認めた。

②仕事を理由にほとんど帰宅しない夫に対する離婚が認められた例(大阪地判昭和43年6月27日・判時533号56頁)
昭和33年ごろから仕事を理由にほとんど帰宅せず(自宅に帰るのは月数回程度),妻に生活費をほとんど渡さない夫に対し,妻が離婚を請求した事案。
裁判所は,仕事のためとはいえ,あまりに多い出張・外泊等の妻ら家庭を顧みない行動は,「悪意の遺棄」とまでは認容できないが,「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして妻からの離婚請求を認容した。

③過度な宗教活動を理由に離婚を認めた例(東京高判平成2年4月25日 判時1351号61頁)
結婚後,妻がエホバの証人の熱心な信者となり,子どもを連れて定期的に集会に参加するようになったことに対し,夫が信仰を止めるよう説得したが,妻がこれを聞かず,別居に至ったという事案。
裁判所は,今後夫婦双方が相手のために自分の考え方や立場を譲り,夫婦としての共同生活を回復する余地は全くないと言わざるを得ないと判断し,夫からの離婚請求を認容した。

④夫の両親と妻の不和を理由に離婚を認めた例(名古屋地岡崎支判昭和43年1月29日 判時515号74頁)
妻と,同居中の夫の両親との間の不和が原因で,夫婦間の婚姻関係が円満を欠くに至ったという事案。
裁判所は,夫が家庭内の円満を取り戻すよう誠意ある態度を示さないことや,夫には婚姻関係を維持する意思がないことが明らかであることを理由に,妻からの離婚請求を認容した。

3 離婚の理由Q&A

Q1 裁判上,離婚原因があると認められれば必ず離婚できるのですか?

A1 離婚できない場合があります。
離婚原因を定めた民法770条は,2項において,「(離婚原因の)第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても,一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは,離婚の請求を棄却することができる。」と定めています(これを「裁量棄却」といいます)。
これは,例えば,夫(妻)が第三者と肉体関係を持った,あるいは,夫(妻)が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとして離婚請求をした場合であっても,裁判所は一切の事情を考慮して離婚を認めないとの判断を下すことができるということです。ただし,実際にこの裁量棄却が認められた裁判例は多くはありません。

Q2 性格の不一致で離婚はできるのですか?

A2  原則として,性格の不一致だけで離婚はできません。
結婚というものが,もともと他人であった夫婦が生活を共にしていくものである以上,ある程度,異なる価値観や生活習慣等が存在することが前提であると考えられているからです。
もっとも,上記「問題となるケース」で挙げたような他の要素と相まってであるとか,性格の不一致をきっかけに別居に至ったなどのような場合には,離婚が認められる場合があります。

Q3 性の不一致で離婚はできるのですか?

A3 離婚ができる場合もあります。
夫婦間の性の不一致も,その内容・程度によっては,「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性があります。
例えば,夫が性的不能者である場合や,異常な性癖を持つ場合である場合などが考えられます。

 

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